『ソリューションセンターLFP(広丘事業所)』

突然ですが、新たな価値創造に向け、エプソンの技術を見学・体感できる施設が各地にあるのをご存じでしょうか。今回は、その中でも共創拠点の場として開設された『ソリューションセンターLFP(広丘事業所)』『インクジェット イノベーションラボ富士見』に足を運び、エプソンの商業・産業用プリンター事業の現在と未来について、P商業・産業事業部長の五十嵐 人志がご紹介します。

印刷のイメージが覆る。畳や壁紙などあらゆるものを印刷できる技術がある。

執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部 副事業本部長 兼 P商業・産業事業部長/五十嵐 人志

P商業・産業事業部とソリューションセンターついて教えてください。

エプソンの中核事業であるP(プリンティングソリューションズ)事業本部は、ホーム・オフィス用プリンターとイノベーションを提供する「Pオフィス・ホーム事業部」、商業・産業用プリンターとイノベーションを展開する「P商業・産業事業部」に分かれています。ここ『ソリューションセンターLFP(広丘事業所)』は、P事業本部の技術を体感できる施設です。主に、商業・産業用の大判プリンターによる写真印刷やテキスタイルをはじめ、多種多様な用途に対応するプリンターや印刷事例が展示されています。パートナー様や地域の学生たちがエプソンの技術に触れることで、創造力が刺激され、さまざまなビジネスの芽が育まれて教育の促進にもつながる場となっているのではないでしょうか。エプソンと言えば、「Colorio(カラリオ)」などのホームプリンターのイメージが強いかもしれませんが、そのコア技術を応用し、商業・産業用プリンター分野においても多くの製品・ソリューションを展開しています。なかには印刷のイメージが覆るような事例もあるので、ぜひP商業・産業事業の現在と未来についてお話しをしながら、ご紹介できればと思います。

商業・産業用プリンター製品の特徴は?

「高画質・高精細な印刷」「環境負荷低減への貢献」「グローバルなトータルサービスの提供」が挙げられると思います。エプソン製プリンターには、エプソンのDNAである「省・小・精の技術」を結集したインクジェット技術が搭載されており、高画質・高精細な印刷を可能にします。さらに、ファッション産業においては、水使用量削減にも貢献できるなど、エプソンの技術を用いて各産業のアナログな手法をデジタル化することは、環境負荷低減に大きく貢献できると考えています。
ここ数年ではソフトウェア開発も進んでおり、ハードウェアをつなぐアプリケーションを含む総合的なサポートとサービスをグローバルで展開していることも特徴のひとつです。特に環境保全意識は、年々高まっている分野ですから、世間の共感性も高く追い風が吹いていると感じています。

コア技術の活用事例は?

商業・産業用プリンター分野においては、大判プリンターのフォトやファインアートにおいて長年培ってきた実績や技術があり、それらを生かし多様な領域に展開しています。たとえば、美術館に展示する複製画やショッピングセンターのポスター・ポップ、専門性の高いCAD図面の印刷など、写真印刷での価値提供だけでなく文化遺産の保守に至るまで活躍領域は多岐に渡ります。
直近の印象的な事例でいえば、住宅・非住宅向けの建材メーカーである大建工業株式会社様との共創により実現した、機能性とデザイン性を両立させたオリジナル吸音パネル。パネルですので、大がかりな工事をしないでもマグネットで壁に貼り付ければ、吸音機能を発揮させることができます。さらに従来、色柄のなかった吸音パネルに、美しい絵柄を印刷することができるようになったためインテリア性がぐんと高まりました。そのほかにも、畳、ガラス、壁紙、床などへのデザインやアートを印刷することにより、私たちの住環境をより彩り豊かなものにし、さらにエプソンの新たな可能性を見せてくれました。では、次に『インクジェット イノベーションラボ富士見』に移動しましょうか。

フォトやファインアートで確かな実績をつくってきたエプソン
大建工業株式会社様との共創により実現したオリジナル吸音パネル
畳や壁紙、ガラスなどさまざまな素材に印刷が可能なインクジェット技術

施設紹介 『インクジェット イノベーションラボ富士見』

デジタル捺染印刷や活用事例、空間体験ができる施設

環境に配慮したファッションを。産業に一石を投じた「デジタル捺染技術」

富士見事業所では、どのような技術を紹介していますか?

富士見事業所内にある『インクジェット イノベーションラボ富士見』は、広丘事業所でご紹介した中でも「デジタル捺染(なっせん)」に特化したイノベーションラボです。お客様・パートナー様のデザインを用いたデジタル捺染のテスト印刷やクリーンでコンパクトな現場環境などを体験することができます。そもそも捺染とは、ファッション業界用語で、私たちが着用する洋服をはじめ、着物やシルクのスカーフなどさまざまな布に色模様を染め出すことを指します。手間暇をかけたアナログな手法※1での捺染の風合いは見事なのですが、一方で製造過程における水使用量や水質汚染、CO2排出量、過酷な労働環境などが問題視されており、国際的な課題となっていることも事実です。
これらの課題に、一石を投じたのがエプソンの「デジタル捺染プリンターMonna Lisa」です。従来のアナログ捺染と比較し、95%の水資源使用量削減、熱量削減※2、ワークフロー日数短縮※3、クリーンな労働環境という優位性を発揮し、ファッション産業構造に変革を巻き起こす技術であると注目を集めています。

※1:染料を糊(のり)に溶かした色糊を用いて布に模様をプリントし,次いで染料の固着を行い,水洗して仕上げる。
※2:デジタル捺染では、アナログな手法において必要な「高温で蒸らす・乾かす」という工程がないため熱量削減が可能になる。
※3:染料インクではなく顔料インクを採用することで、ワークフローが最短10日間から最短3日間へ短縮できる。

ファッション業界で実際に行った取り組み事例は?

2022年7月にフランスのパリで開催されたパリオートクチュールコレクションにおいて、
ファッションデザイナー YUIMA NAKAZATOさんの制作サポーターとして参画したことは、大きな反響がありました。デジタル捺染は、熱を加えず、かつ対象物に触れることなく印刷できるため、約0.07mmと極めて薄く繊細なシルクオーガンジーなどの布にも対応しており、手描きの質感や微妙な色合いを表現することができます。さらに、ワークフローが短いため色味・模様の調整を繰り返しやすく、"衣装デザインを作り込む"という本質的な創作活動に時間を費やすことを可能にしました。NAKAZATOさんとは、継続的な協力関係を築くことで技術改良を図りながら、ファッション産業への発信を続けています。
また文化服装学院様とは、2022年度に「エプソンとつくる、デジタルで創造するファッション」プロジェクトを始動。未来のデザイナーである学生たちにもデジタル捺染に触れてもらい、卒業制作ファッションショーでも「デジタル捺染プリンターMonna Lisa」が使用されました。限られた学生生活の中で、自由に描いたデザインがスピーディに形にできるデジタル捺染は大変有意義ではないかと、実際に学生たちの輝く瞳をみて実感しました。ファッションの教育現場にもデジタル捺染を浸透させることで、将来ファッション産業を牽引していく若者たちにとって、馴染み深い技術になることを望んでいます。このような話題性のある共創への取り組みは、各種メディアでも反響が大きく、エプソンのプリンティングソリューションズ事業の認知度拡大にもつながりました。

取り組みによりどのような影響がありましたか?

著名な方たちや学生たちとの共創は、エプソンにとっても好循環を生み出してくれています。「デジタル捺染プリンターMonna Lisa」の使用感や要望など、現場のリアルな声を拾い上げ、ニーズに合った技術改良を進めることができます。引き続き、認知度拡大とビジネスモデル構築に努め、デジタル捺染をさらに普及させ、「社会」「環境」に貢献できるイノベーションを提供し続けていきます。そして、パートナー様との共創の機会や共創拠点の場である『ソリューションセンターLFP(広丘事業所)』『インクジェット イノベーションラボ富士見』自体が、働く社員のモチベーション向上や自社製品への愛着などインナーブランディングを一層高める手段にもなっていると感じています。

エプソンのコア技術で、世界の環境問題にも向き合う。

最後に、エプソンの技術を海外ではどのように展開するのか教えてください。

エプソンは世界各地に販売会社・拠点を構えており、デジタル捺染含む商業・産業用プリンターのシェアは拡大し続けています。その先に見ているのは、世界的問題となっている自然環境・住環境・労働環境における課題解決への貢献。特に捺染加工の主要生産国である東南アジアにとって、産業を支えるため多くの悪影響を与えてきてしまったという負の面もあるかと思います。そのような状況を直視し、課題に向き合い、エプソンの製品やイノベーションを投入することで環境改善に取り組んでいかなければならないと感じています。ただそれはエプソンだけで実現することはできません。グローバルネットワークを生かし、さまざまな企業と共創しながら、世界をより良くリードしていける存在になれればと思います。

Message: 有限である時間を充実させ、有意義な人生に。

最後に、私のポリシーをお伝えさせてください。限りある時間を充実させることが、豊かで有意義な人生につながる――。そのことをいつも念頭に置き、全力で楽しめる選択ができるよう心がけています。それは、日々仕事をする時間に関しても同じです。エプソンには、社員もパートナー様もお客様も皆の胸が高鳴るような製品やサービス、イノベーションを提供できる環境があります。時には大変なこともあるかもしれません。ですが、それすらも成長の糧にして、ともに楽しみ、ともに未来を創造していきましょう。

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