成長領域事業の挑戦。インクジェットの進化と共創により、持続可能な社会に貢献する。

長期ビジョン「Epson 25 Renewed」内にて、成長領域に位置付けられているIJS(インクジェットソリューションズ)事業部。エプソンプリンターの中核機能を担うデバイス(キーデバイス)であるインクジェット技術を搭載したプリントヘッドは、「共創」により社会にどのような影響を与えるのか――。持続可能な社会の実現に貢献する未来と将来性、世界市場開拓に向けた戦略について、IJS外販戦略推進部 部長 山本が語ります。
参考:長期ビジョン「Epson 25 Renewed」

IJS事業部 IJS外販戦略推進部 部長/山本 崇雄

IJS事業部のビジョンと戦略についてお聞かせください。

エプソンプリンターのキーデバイスであるプリントヘッドを用いた共創により、さまざまなソリューションを創造するIJS事業部。掲げるビジョンは、「プリントヘッドを基軸としたソリューションを提供し、お客様の印刷・生産プロセスを革新する。そして、インクジェットの優位性を生かし、持続可能な社会の実現に貢献する」というもの。「従来の完成品事業領域を超えて、世の中の印刷・生産プロセスを革新する」ことに軸を置き、戦略を描いています。印刷プロセスは、世の中にある既存のアナログ印刷をデジタル印刷に変えること。生産プロセスは、まだ参入できていない新たなアプリケーションやニーズを開拓し、革新的な生産方法を拡げることを指しています。プリントヘッドによる印刷・生産プロセスの革新を可能とするのは、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」内で重点テーマとして語られる「共創」です。

エプソンのコア技術が結集したプリントヘッドは、完成品ではなくキーデバイスですので、パートナー様との共創により価値を最大化することができます。共創の広がりは、国内ではもちろん、中国・ヨーロッパ・アメリカ・アジアなど世界市場にまで及んでいます。すでにエプソンのプリントヘッド市場が活発化している地域やパートナー様となり得るプリンター関連企業の多い地域、世界の最先端技術が集まる地域において、今後ますますエプソンのプリントヘッドのプレゼンスを高めていく方針です。ただ、共創を可能としてくれるのは、インクジェットの優位性があってこそ。IJS事業を語るうえで欠かせない技術です。

エプソンインクジェットの優位性とは?

インクジェットとは、プリントヘッドに搭載されているプリンティング技術を指します。1984年に技術開発・プリンターへの実装がなされてから、現在は三代目「PrecisionCore(プレシジョンコア)」テクノロジーへと発展。エプソンの「省・小・精の技術」をベースに培ってきた経験とノウハウに、高精度MEMS加工技術や薄膜ピエゾテクノロジーなどを融合させることで、インクジェットプリンティングの水準を新たなレベルまで引き上げました。

エプソンのインクジェットには、大きく4つの優位性「環境負荷」「非接触」「オンデマンド」「インク対応性」があります。一つめ、「環境負荷」についてですが、インクジェットは、レーザープリント技術と比べてシンプルな印字プロセスのため、低消費電力=省エネ※1での印刷が可能です。さらに、インクジェットは“捨てない技術”と呼ばれるように材料使用料や廃棄量が少ないことからも、環境負荷低減に貢献しています。環境負荷への優位性は、環境意識の高いヨーロッパにおいて特に注目を集める理由にもなっています。二つめは、「非接触」であること。インクジェットは、インクを吐出して印刷する仕様のため、対象物に触れることなく彩りや機能を付加することができます。よって、さまざまな素材の対象物への印刷を実現します。三つめに挙げる「オンデマンド」は、版を使わずデジタル印刷ができることから、スピーディーな少量多品種生産を可能にします。最後に「インク対応性」について。圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインク液滴を吐出する“ピエゾ方式”は非加熱であるため、水系インクから工業用の溶剤インクやUVインクまで多種多様なインクに対応しています。これらエプソンのコア技術が結集したプリントヘッドは、技術の高さから生まれる製品力だけでなく、あらゆる分野の商業・産業に適応する高いカスタマイズ性を持ち合わせています。

※1:例えば、エプソンのインクジェット技術が搭載されたスマートチャージを利用することで、レーザープリンターと比べて低消費電力であるため、CO₂排出量を47%以上抑えることが可能。エプソンのスマートチャージ対応A3複合機各機種のTEC値とENERGY STAR®画像機器基準Version3.0にて定められたTEC基準値で比較した場合の削減比率。(<LX>シリーズは60ppm機、<LM>シリーズは40ppm機、<PX>シリーズは24ppm機のTEC基準値と比較)

共創により進化し続けるプリントヘッドは、将来性に溢れている。

現在、どのような分野での共創が実装されていますか?

従来のインクジェット領域でいえば、ファッション分野のテキスタイルやエレクトロニクス分野の回路基板・ディスプレイ、幅広い分野におけるラベル・パッケージなど。新しい領域では、コスメティック関連や生活用品関連、食品デコレーション、、自動車の外装・内装、医療の検査など、印刷にとどまらない分野までインクジェットを用いた新製品の開発や生産プロセス改革が進んでいます。垂直統合型ではなく、各領域のプロフェッショナルをコーディネートしていくことで、スケールメリットの大きな市場へのアプローチだけでなく、エンドユーザーが求める先進的でユニークな領域へのアプローチも可能になりました。

一方で課題もまだあり、各領域においてすでに生産プロセスが確立されています。そのため環境負荷低減・コスト削減が実現できるインクジェットプリントに置き換えるだけのメリット、たとえば、各領域で求められる基準を満たす品質担保と24時間365日安定稼働できる信頼性、ビジネスモデルの構築など、技術的進化と戦略を地道に組み立てていく必要はあります。

山本さんは共創の動きにどのような将来性を感じていますか?

共創の推進は、エプソンにとって大きな方向転換であり、今後さらに幅広い業界の潜在的ニーズを掘り起こせる動きだと考えています。私個人の意見なのですが、製品の開発から生産、販売にいたるまでの全プロセスを自社で担う垂直統合型だと、柔軟な発想や多様な価値観が取り込まれることがないゆえに、私たちが丹精込めてつくってきた製品や技術自体が“進化できない”と感じていました。世界市場を舞台にさらなる発展を遂げるためには、“進化し続けられる環境”が必要だと――。

実際に、現在取り組むプロジェクトの発端の多くは、展示会やWeb、富士見・中国・スイスにあるインクジェットを体験できるラボにおいて、パートナー様やエンドユーザーから寄せられた声から。その中には、長年プリンター設計に関わってきた私自身も驚くようなニーズがあり、インクジェットに将来性を感じられずにはいられません。顕在化しているニーズは、まだほんのわずかだと考えているので、あらゆる業界の潜在的なニーズを掘り起こすことで可能性は広がり、プリントヘッド市場自体にも影響を与え、拡大していけるのではないでしょうか。

パートナー様のビジネスに深く入り込み、市場に変化をもたらす存在へ。

外販戦略推進とエンジニア、それぞれのやりがいは?

IJS外販戦略推進部には、前職は商社や自動車パーツメーカーなどさまざまな経歴を持つ、個性豊かな社員が活躍しています。お客様は、共創パートナー様という感覚が強く、「プリントヘッドでどのようなソリューション・ビジネスを確立できるか」を対等に議論し合える関係性が築かれており、パートナー様のビジネスに深く入り込む商談ができるやりがいがあります。そして、未開拓領域も多くあるので、市場にコアプロダクトを印象づける立役者となれる醍醐味も味わうことができるでしょう。

エンジニアに関しては、丁寧に創り上げた技術が、共創により世界中の人たちに届けられる喜びがあります。また完成品を提供するだけでなく、パートナー様先に出向いて、スピード感あるフィードバックを直接貰いながら設計を進めていけることは、前向きな原動力になっているようです。私も長らく機械設計として従事していたので、パートナー様の反応を目の当たりにできる環境は、大変うらやましいです。そして何といっても、世界各国の最先端技術開発に携われることは、エプソンのエンジニア冥利に尽きることと思います。

パーパスを共有し合いながら、挑戦し続ける。

共創を進めるうえで意識していることは?

「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」というエプソンのパーパスを共有しながら働いています。インクジェットプリントを社会に広げていくことで、地球環境の保全や文化の発展に貢献できますが、それはエプソングループ内だけでは実現できません。パートナー様や社会と共に歩む姿勢を忘れずに日々の業務に取り組んでいます。

IJS事業部は、まだ全貌が明るみになっていないプリントヘッド市場の先駆者として、今後ますますの発展が期待されるチャレンジングな組織です。その途上を同じフロアで社員同士が肩を並べ、距離感の近いところで、発見や発展、喜びを共有しながら業務を遂行できたらと思います。

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信州(長野県)から、グローバルでエキサイティングな仕事を。

私は関西出身なのですが、信州はとても恵まれた環境だと感じます。山脈に囲まれているため台風被害は少ないですし、湿度が低く過ごしやすいです。空気がきれいなので、子どもたちにとっても良い影響があると思っています。そんな環境で、世界の人々とつながりながら仕事をし、挑戦への機会にも溢れている――。迷われている方は、選考の中でぜひ一度足を運んでみてください。きっと気に入ってくれるはずです。