エプソンにしか、作れないロボットがある。

エプソンは、プリンターやプロジェクターだけではない――。12年連続で世界No.1シェア※1を獲得したエプソンの水平多関節(スカラ)ロボットなどを創造できる背景には、エプソンの技術を組み合わせたロボットと戦略があります。ロボットと周辺機器の技術やソフトウェアの進化とあわせて、将来の展望を中心にMS(マニュファクチュアリングソリューションズ)事業戦略推進部 岡 俊輔が語ります。
※1産業用スカラロボットの2011~2022年の数量ベースの出荷実績において(株式会社富士経済『2012~2023年版ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望』調べ)
参考:長期ビジョン「Epson 25 Renewed」

ユーザーでもあるからこそ、創造できたロボット。

MS事業部 MS事業戦略推進部 シニアスタッフ/岡 俊輔

MS事業部が提供するロボットシステムとは?

前職でFAカメラ領域の海外営業・事業立ち上げを経て、エプソンに入社。
現在は、エプソンのロボット周辺機器の事業戦略推進に携わる。

MS事業部では、ロボットと周辺機器、ソフトウェアも含めるトータルシステムを提供しています。ロボットは、大きく分けて水平多関節(スカラ)ロボットと垂直多関節(6軸)ロボットがあります。1983年のロボット市場への参入当初から、マルチタスク開発やアーチモーション開発、静電気対策仕様開発など数々の業界初となる技術革新を経て、エプソンのロボットは進化してきました。水平多関節(スカラ)ロボットにおいては、2011年以来世界シェア1位※2の実績を獲得しています。加えて、「分光ビジョンシステム」や「画像処理システム」、「力覚センサーシステム」などの周辺機器と、エプソンロボット総合ソフトウェア「EPSON RC+7.0」の他、プリンターやプロジェクターなどの情報機器で構築してきたグローバルな販売、サービス・サポート網を活用した導入サポートにより、トータルコスト・工数削減やワンストップサービスによる長期安定稼働を提供できることが特長です。

※2:産業用スカラロボットの2011~2022年の数量ベース出荷実績において(株式会社富士経済『2012~2023ワールドワイドロボット市場の現状と将来展望』調べ)

エプソンのロボットの強みは?

エプソンのDNAである「省・小・精※3」の技術が裏付ける、「高速・高精度」、緻密で繊細な動きを可能にする「ロボット制御技術」、速く動いて正確に止まる「ジャイロプラステクノロジー※4」が挙げられます。エプソンのロボット開発の始まりは、腕時計のムーブメント組立に使用する水平多関節(スカラ)ロボットを自社開発したところから。メーカーであり、ユーザーでもあるため、現場のニーズやこだわりを追求し、技術開発はもちろん、製造現場における自動化ノウハウで生産プロセスを革新しています。さらに周辺機器に関しては、色味の品質管理ができる「分光ビジョンシステム」や人の手のように繊細な力加減を調整できる「力覚センサーシステム」など、エプソン独自の技術力の高さが発揮されています。そして、ロボットと周辺機器を束ねるソフトウェアや、グローバルなサービス・サポート体制があるため、生産性・柔軟性が高い生産システムのソリューションを提供できることもエプソンならではだと感じています。

※3:無駄を省き、より小さく、より精緻にするという考え方。

※4:速く動いて正確に止まるエプソンの「ジャイロプラステクノロジー」は、自社水晶デバイスから生まれたジャイロセンサー×振動制御技術で実現。

「小さな工場」をつくり、生産工程で抱える課題を解決へ。

長期ビジョン「Epson 25 Renewed」内でのMS事業戦略とは?

事業戦略の軸となるのは長期ビジョン「Epson 25 Renewed」。「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」というありたい姿に向けて、社会課題を起点とした各事業の成長戦略を描いています。社会課題の中でMS事業部が特に貢献できる領域として、従来の工場が生産工程で抱える課題「労働環境の改善」「環境負荷低減」「分散型社会をつなげる」ことに向き合っています。「省・小・精」の技術と自社工場などの製造現場で培ったノウハウで最適化した「小さな工場」をつくりあげ、ものづくり革新を牽引していく方針です。

生産過程で抱える課題解決事例は?

これまで自動車や電気・電子、食品・医薬・医療などでの導入実績があり、各工場で抱える課題解決を実現してきました。たとえば、食品業界の中でも特に深刻な人手不足という課題を抱えながらも、ロボット・AI導入の難易度が高い惣菜工場において、2021年度にエプソンのロボットシステムを導入。業界の人手不足解消を目的に当システムの採用が広がっています。また経済産業省の「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」、農林水産省の「スマート食品産業実証事業」に参画し、2023年3月には協業企業との連携で惣菜盛付ロボットの導入を実現しています。ロボットシステムの開発・改良を経て、柔軟・不定形である繊細な惣菜の盛り付けを可能にし、さらに省スペースでの設置を実現しています。エプソンのロボットは、繊細で緻密なものを扱うことやコンパクトなスペースでの稼働を得意としているので、これまで難しいと言われているような産業でのロボット導入も可能になり、人手不足改善・生産性の向上などを実現していけるでしょう。

エプソンならではの戦略は?

さまざまな産業でロボット需要が高まる中、エプソンのロボットシステムであれば、より簡易的にロボット導入ができることをユーザー層に対してアプローチすることも必要だと考えています。たとえば、パーツフィーディングシステム※5を採用すれば、システム設計時間の大幅削減が可能になり、多品種対応や切り替え時間の短縮にも貢献できます。さらに、ロボットと周辺機器、ソフトウェアも含めるトータルシステムとしての"ソリューション"を提案することで、目まぐるしく発展するロボット市場で勝ち抜いていけるのではないでしょうか。

※5:エプソンロボット、画像処理システム、高機能フィーダーにより、パーツ(部品)のピック(把持)プレース(配置)を簡単に実現するシステム。

難しかった色味の品質管理。「分光ビジョンシステム」で自動化へ。

岡さんはどの分野を担当しているのですか?

私は、ロボットシステムの中でも周辺機器関連の戦略推進を担当しています。エプソン独自の技術「分光ビジョンシステム」や「力覚センサーシステム」などの周辺機器を用いることで、エプソンのロボットシステムの付加価値を向上させるビジネス戦略を描くことが私に求められていることです。また前職で培ったFAカメラの知見から、幅広いカメラモデルをエプソンロボット総合ソフトウェア「EPSON RC+7.0」で対応することでエプソンロボットの導入にさらなる柔軟性をもたらすことと、顧客価値に繋がる新しいビジネスモデルの構築に取り組んでいます。

周辺機器で岡さんが注目する技術やプロダクトは?

サプライチェーンにおける脱炭素・資源循環においては、サプライヤー様の協業が必要不可欠。環境意識の浸透促進や環境保全指標の設定などから一つ一つ取り組んでいるところです。エプソングループ内においては、エプソングループ内においては、独自の金属粉末製造技術を活かして、金属などを再生し利用する仕組みができています。地下資源消費ゼロは、循環資源利用率を現在の20%から2050年には100%に引き上げる構想で、グループ一丸となってものづくりの根底から見直す取り組みを進めます。すでに達成したこととしては、計画を前倒し、2021年11月に国内の再生可能エネルギー化を完了させました。今、私が働くここ、長野県の広丘事業所もすべて水力由来のCO2フリー電気に切り替えられています。

再生可能エネルギーへの移行は大変なこともあったのでは?

色味検査の自動化を実現する「分光ビジョンシステム」は、FAカメラに携わっていた前職でも触れたことのない領域と市場で、非常に興味深く、そして可能性を感じています。「分光ビジョンシステム」は、自社開発の新技術「MEMS Fabry-Perot Tunable Filter※6」を搭載し、高精度・小型化した分光カメラと、分光測定が可能なオフラインソフトウェア「Epson Spectroscopic Vision Tools」もしくは「EPSON RC+7.0 / Vision Guide 7.0」で構成されています。

※6:MEMS技術は、一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に、サブミクロンレベルの精度で機械要素部品やセンサー、アクチュエーター、電子回路などを集積化する技術。

製造現場における色味の品質管理は、人手不足が課題であり自動化が求められている分野の一つなのですが、従来の色味検査カメラでは計測が難しく、大半が人の目視検査に頼らざるをえない状況でした。人の目視検査では、個人差によるばらつきや体調により色彩判断を見誤ることも往々にしてありました。しかし、エプソンの「分光ビジョンシステム」が色味の品質管理の自動化を実現し、正確な色彩判断を可能にしました。このことは、化粧品・食品・日用品・アパレル・自動車など幅広い業界における品質管理現場に影響を与えています。たとえば、微妙な色遣いを求められるファンデーションや口紅などの化粧品の色味や焼き菓子などの焼き色、プラスチックチューブの色味、服飾品や自動車の色などの品質管理現場でのニーズが挙げられます。国内においての実績を積み重ね、さらには世界への市場にもアプローチできるよう、今まさに戦略を検討しているところです。

「分光ビジョンシステム」は、従来技術では人による目視検査を置き換えることは不可能だと言われ、課題解決ができずにいた分野に一石を投じた画期的なシステムです。各業界に影響を与える革新的な技術に触れながら戦略を検討できることは、やりがいがあり面白いと感じています。

地域に根差した企業で、世界に広がるキャリアを選択する。

岡さんの転職の動機とエプソンに入社した決め手は?

前職では、シンガポールにてFAカメラの戦略拡販・新規事業立ち上げなどを経験してきました。成果を十分残し、やり終えた感覚があり、次のキャリアを悩んでいたタイミングで「エプソンへの転職」も候補にあがりました。社長の小川さんが「楽しく仕事をしよう」と話す記事に共感と好印象を抱いていたこと。前職の経験を生かしながら、FA業界における経験や知識の幅を広げたいという思いを叶えるため、エプソンへの入社を考えました。

入社まで仕事内容や長野の暮らし方にミスマッチがないよう、何度も面接を重ね、家族を連れて交流会にも参加しました。長野にはこれまで縁がなかったので、妻は不安も大きかったようですが、交流会が開催された春、ちょうど満開の桜並木を見て「ここで暮らそうか」と心を決めてくれました。見渡せば北アルプスが広がり、自然豊かな環境は、私にとって魅力的でした。前職での海外駐在の際には、ヘイズ(大規模な野焼きや森林火災により生じる煙)の影響で外に出られないことや、高温多湿の環境から四六時中エアコンを稼働する環境に、娘の咳が止まらなくなることもありました。ですから、綺麗な空気や水に憧れもありましたね。

そしてエプソンが地域に根差した企業である点も魅力でした。娘の学校で使用しているプロジェクターがエプソン製だったり、持ち帰ったプリントがエプソンの「PaperLab(ペーパーラボ)※7」からつくられたものだったり、娘のチアリーディングチームのスポンサーがエプソンだったり…。「パパの会社だよ」と会話をすることが増えました。身近なところにあり、日々の生活の中で「地域を大切にする会社」ということが実感できることも嬉しいです。

※7:世界で初めて(2016年11月時点、乾式のオフィス製紙機において世界初/エプソン調べ)、使用済みの紙を原料として、文書情報を完全に抹消した上で、新たな紙を生産できる乾式のオフィス製紙機。

Message
前向きに、楽しく技術を磨ける場所。

もともと小川社長も、私が働く豊科事業所の出身。そのため、ここは「仕事は楽しく」「社員が幸せに」という雰囲気が特に根付いている事業所だと感じています。技術者の多い豊科事業所には、前向きに仕事を楽しむ魅力的な社員が集まっています。ロボット愛あふれる事業戦略推進部隊と技術者で議論を交わし合いながら、濃い時間が過ごせるでしょう。