エプソンは、地球のために「循環型経済」を牽引する使命がある。

長期ビジョン「Epson 25 Renewed」には、「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」というエプソンのありたい姿を掲げ、その実現に向けた価値創造ストーリーを描いています。その中でも、エプソンが最も重点を置く「環境」への貢献について、地球環境戦略推進室 桐原千恵が語ります。セイコーエプソンと環境、そこには創業時からの使命があります。
参考:長期ビジョン「Epson 25 Renewed」

創業時から、「環境」「地域」と共に事業を育んできた。

地球環境戦略推進室 課長/桐原 千恵

今、日本企業の多くが積極的に取り組む「環境」ですが、エプソンの社会的な立ち位置を教えてください。

化石燃料や鉱物資源などは、経済発展に貢献し私たちに豊かさをもたらしてくれました。一方で、大量生産・大量消費・大量廃棄がもたらす地球への代償は大きく、廃棄や汚染、生物多様性の損失、そして異常気象による激甚災害など深刻な脅威として表れています。地球と将来世代のため、企業と人々は価値観を見直し、行動(選択)を変える必要があります。その中でエプソンは、「ものづくり企業としてやり遂げなければならないこと」すなわち、限りある資源を有効活用するなど、資源をより持続可能な形で使用する「循環型経済」を実現するため、「環境ビジョン2050」を掲げました。エプソンは持続可能な社会を牽引する存在として、世の中に先駆けた取り組みを行っています。

いつ頃から、環境保全への意識があったのでしょうか?

”エプソンと環境活動のはじまり”についてお話します。1942年、セイコーエプソンが誕生したのは信州諏訪地方でした。凛々しい山々と瑞々しい空気、美しい諏訪湖・・・。豊かな自然に囲まれた場所で事業を営むものとして、創業者 山崎久夫の想いは強く、「絶対に諏訪湖を汚してはならない」と事業所から出る排水処理に取り組んでいました。自然と人々の生活と共に在るものづくり企業として「地域との共生」を絶対的な使命として守り抜いてきたのです。環境保全の意識は、創業時から現在に至るまで脈々と受け継がれています。

創業時から現在に至るまでの変遷は?

創業時から排水処理に取り組み、1970年代には法律の規定値よりも厳しい社内基準を設定し、水質汚染防止の徹底を図りました。またフロンによるオゾン層破壊が問題になっていた1980年代には、「環境に悪いとわかったものを使うわけにはいかない」と削減ではなく全廃を目指すことを決め、1988年を「環境元年」とし、世界に先駆けて「フロンレス宣言」を掲げ、1993年には全世界でフロン全廃を達成。「第二の環境元年」とした1998年には、総合的な環境保全に取り組むべく「環境総合施策」を策定。以降、省エネ・植林活動支援・ISO14001認証取得・生産材グリーン購入活動など全世界での活動を積極的に行ってきました。2008年には当時まだ主流ではない長期指針となる「環境ビジョン2050」を先んじて掲げ、エプソンの商品を通してお客様の環境負荷低減に貢献することにも注力しました。

「カーボンマイナス」「地下資源※1消費ゼロ」という高い目標に向けて。

環境ビジョンについて詳細をお聞かせください。

現在の環境ビジョンは、その後の国際的な環境変化を踏まえ、2021年3月に改定したものです。2050年までに「カーボンマイナス」「地下資源消費ゼロ」。2030年までに1.5℃シナリオ※2に沿った「総排出量削減」という目標を掲げ、「脱炭素」「資源循環」「環境技術開発」分野へ1,000億円の費用投下を決めました。なかなか高い目標ではありますが、構想として、2025年に向けた長期ビジョン「Epson 25 Renewed」内にて具体的な取り組みが明記されています。主にサプライチェーンでの脱炭素・資源循環への取り組み、環境負荷削減の商品・サービスの提供、共創による革新的な環境技術開発、国際的な環境保全活動への貢献など、多角的なアプローチを行う計画があり、着実に成果を積み上げているものもあります。

※1:原油、金属などの枯渇性資源
※2:SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)のクライテリアに基づく科学的な知見と整合した温室効果ガスの削減目標

達成しているものも含め、現状はいかがでしょうか?

サプライチェーンにおける脱炭素・資源循環においては、サプライヤー様の協業が必要不可欠。環境意識の浸透促進や環境保全指標の設定などから一つ一つ取り組んでいるところです。エプソングループ内においては、エプソングループ内においては、独自の金属粉末製造技術を活かして、金属などを再生し利用する仕組みができています。地下資源消費ゼロは、循環資源利用率を現在の20%から2050年には100%に引き上げる構想で、グループ一丸となってものづくりの根底から見直す取り組みを進めます。すでに達成したこととしては、計画を前倒し、2021年11月に国内の再生可能エネルギー化を完了させました。今、私が働くここ、長野県の広丘事業所もすべて水力由来のCO2フリー電気に切り替えられています。

再生可能エネルギーへの移行は大変なこともあったのでは?

そうですね。再生可能エネルギーへの切り替えを当初から主導していたのは、私の上司 木村なのですが、苦労も多かったようです。長野県から再生可能エネルギーへの切り替えを模索したのですが、当時は社会的な盛り上がりもまだなく、再エネ電力メニュー自体もありませんでした。エプソンの経営計画と環境指標を示しながら、電力会社様に掛け合い、何年もかけて実現までこぎつけました。またエプソンだけではなく、地域の企業や住民の方にも再生可能エネルギーを利用してもらう必要があると考えていますので、新規の水力発電開発への継続した支援を行っています。

エプソンの技術と製品で、さまざまな業界に革新を。

環境負荷低減を実現する製品・サービスの提供についてお聞かせください。

社会に一番のインパクトを与えるのは、やはりエプソンのDNA「省・小・精」の技術が詰まった製品自体にあります。“無駄を省き、より小さく、より精緻にする”という考え方は、まさにサステナブルで今後も求められていくでしょう。これにより、「人と地球を豊かに彩る」ことをエプソンの志としています。代表的な製品は、エプソンのインクジェット技術を応用したオフィスプリンター「スマートチャージ」。レーザープリンターと比べて省電力性能で、CO2排出量を47%以上削減※3します。ほかにも水を使わず※4に繊維素材を高付加なものに価値変換する「ドライファイバーテクノロジー」や独自のディスクドライブシステムにより小型化と高効率の射出成形を実現した「小型射出成形機」などがあります。これらの技術をあらゆる業界との「共創」を経て、発展・拡大させていくことが、社会全体の環境保全につながると考えています。

※3:エプソンのスマートチャージ対応A3複合機各機種のTEC値とENERGY STAR® 画像機器基準Version3.0にて定められたTEC基準値で比較した場合の削減比率。(<LX>シリーズは60ppm機、<LM>シリーズは40ppm機、<PX>シリーズは24ppm機のTEC基準値と比較)
※4:適度な湿度が必要です。

「共創」による多様な業界への影響は?

(写真左:桐原/写真右:地球環境戦略推進室 副室長 木村 勝己)

たとえば、環境負荷が大きいと言われるファッション業界。インクジェット技術が注目を集めており、2022年7月にフランスのパリで開催されたパリオートクチュールコレクションにおいて、ファッションデザイナー「YUIMA NAKAZATO」の制作サポーターとして参画し、2022年10月にはファッション業界の変革を目指すパートナーシップを締結しました。ほかにも、東大発スタートアップ企業エレファンテック株式会社と業務提携を結び、フレキシブル基板分野でもエプソンのインクジェット技術が活躍。従来の製造過程よりも材料・廃棄物などの環境負荷を低減し、製造コスト・リードタイムの削減を実現しています。このように、エプソンの技術は大きな可能性を秘めており、さまざまな業界で産業構造の革新を巻き起こしていけると信じています。

Message

わたしは地元が長野県松本市なのですが、大人になってからスノーボードに夢中になり、長野県の魅力に改めて気づきました。仕事を終えて、一歩外に出たときに自然豊かな環境が当たり前にある場所は贅沢です。休日に、自然に触れてしっかりリフレッシュできると、仕事への意欲や新しい発想も沸いてきます。自然あふれる環境にいながら、世界を舞台に創造と挑戦ができる場所です。

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