世界シェアNo.1。エプソンの技術を結集したスカラロボット

産業用スカラロボットの2011~2021年の数量ベース出荷実績において(株式会社富士経済『2012~2022ワールドワイドロボット市場の現状と将来展望』調べ)

MS事業部長 執行役員/内藤 恵二郎(中央)

はじめに、エプソンにおけるMS事業の沿革と現在の事業概要について教えてください。

エプソンの創業は1942年、時計部品の生産から始まり、高品質の時計をより多くより効率的に生産するため工場における生産ラインの自動化にいち早く取り組んできました。そうして1981年に社内向けの産業用ロボットを開発。その後1983年からはロボットの社外販売を開始し、ロボティクスソリューション事業部と称して事業を拡大しながら、2021年にMS事業部と改称しました。

MS事業部の事業は大きく3つに分けられます。1つ目は、核となるロボット事業です。長年モノづくりを続けてきた当社のノウハウを生かし、省エネルギーで小型かつ高精度の産業用ロボットを開発しています。エプソン独自の力覚センサーや分光カメラなどを活用することによって、さまざまな生産現場の工数削減や人材不足解消に貢献しています。

2つ目は、プラスチック部品を成形する射出成形機です。従来、プラスチックの成形には大型の射出成形機が使われ、設置スペースが必要なうえに、金型の交換や樹脂替えなどで大量の材料ロスがありました。そこで当社は非常にコンパクトな射出成形機を開発。少ない原料で部品を製造したり、完成品工場内のわずかなスペースで生産することで輸送に伴うCO2の発生を抑制したりなど、環境負荷軽減に大きく貢献しています。

そして3つ目が、エンジニアリングと呼ばれるソリューション事業です。お客様のニーズや課題を起点とした新しいソリューションを創発すべく、今まさに動き出そうとしている事業です。

産業用ロボットは競合他社も多い市場ですが、MS事業部ならではの強み、競争優位性はどこにあるのでしょうか。

われわれの強みはやはり、技術力です。これまで時計やプリンターの開発で培ってきた精密加工技術や運用ノウハウが、そのままロボットに生かされています。当社の得意分野である小型部品の組み立てに使われる水平多関節(スカラ)ロボットは、現在世界の約30%のシェアを獲得しています。

また、当社のDNAであるお客様に対する「誠実努力」の姿勢も強みの一つです。長い歴史のなかでお客様に寄り添い期待に応え続けてきたからこそ、新規事業であるMS事業領域においてもお客様から大きな信頼を寄せていただいていると実感します。

新製品を続々と開発。目指すは毎年15%以上の売り上げ成長

MS事業部における今後の展望をお聞かせください。

MS事業部では、当社の長期ビジョン「Epson 25 Renewed」において、毎年15%以上の売り上げ成長 という大きな目標を掲げています。

そのための取り組みとして、ロボット事業においてはジャイロプラステクノロジーを活用した高速・高精度を追求した新たな産業用スカラロボット「GXシリーズ」の販売を開始しました。そのほか、製造現場での色検査を可能にする分光ビジョンシステムも開発。製品の形に加え、色の微妙な違いまでを判別できるため、検査ミスの防止はもちろん、検査の自動化を実現します。

一方で射出成形機領域では、グループ会社であるエプソンテックフオルムのオフィスに「レンタルラボ」を新設しました。レンタルラボでは、お客様が作りたい新しいプラスチック部品の実証実験を行ったり、当社の射出成形機のデモを行ったりしています。

加えて、エプソンの社内工場の自動化で蓄積したさまざまな生産技術ノウハウを活用し、自動化手段を模索している社外のお客様の困りごとの解決も進めています。例えば、ある総菜工場では、これまで人の手で行っていた総菜の盛り付けやトレーの包装作業といった繊細な動きが求められた工程を、ロボットによって自動化することに成功しました。このような取り組みを通じて、エンジニアリング事業の拡大も図っています。

こうした事業拡大に伴い、従来のハイテク業界のお客様に加えて、医療や食品など新たな業界のお客様からの引き合いも増えてきました。

当社の技術力は、多様な業界の課題解決に貢献できます。毎年15%以上の成長は決して簡単ではありませんが、MS事業部なら必ず達成できると確信しています。

技術の専門領域×製品カテゴリーで自分だけのキャリアを築く

MS企画設計部/松本 隆伸

松本さんは2009年に新卒でエプソンに入社されたそうですが、これまで担当されてきた業務についてお聞かせください。

新卒で入社後、まず水晶事業部に配属されました。水晶振動子のデバイス設計に約2年従事した後、センサー事業部に異動して産業用ロボットの基礎要素を手掛けてきました。当初は力覚センサーのメカ設計を担当していたのですが、その後はエレキ設計にうつりロボットのコントローラー設計などに携わりました。

ロボット開発におけるさまざまな領域の知見を生かしながら、現在は機能安全の全体設計および機能安全認証設計の責任者を務めています。

メカ設計、エレキ設計、そして認証設計とさまざまな領域を経験されていますが、そのなかでも特に印象的だったプロジェクトについて教えてください。

印象に残っているのは、ある力覚センサーの開発案件です。基礎要素の設計から開発、実用化検証、そして量産まですべての工程を手掛けたプロジェクトで、売り上げにも大きく貢献できましたし、年間アワードである社長賞も受賞した非常にやりがいのある経験でした。

そもそも力覚センサーとは、ロボットに適切な力感覚を与えるシステムです。教示作業だけでは対応できない緻密な作業や繊細な工程など、従来は熟練者に頼っていた生産工程を、ロボットによって自動化できます。

エプソンにはもともと社内専用機向けに開発していた高精度な力覚センサーがあったのですが、当プロジェクトでは、その規格を標準化し自社のさまざまなロボットに適用できるように改良しました。その結果、社外向けに販売できるようになり、量産が実現したのです。

すばらしい成果を上げたプロジェクトですね。成功した要因は何だったのでしょうか。

まず、時代のニーズに合わせてすばやく動けたことが大きいです。また、社内の部門を横断した強い連携体制も要因の一つだったと思います。というのも、開発部門にとどまらず、生産技術、品質管理など他部門も巻き込み、皆が自身の領域を広げながらプロジェクトを推進したのです。

私自身も、社内のあらゆる部門と連携し、それぞれの業務や視点を学べたので、ロボット開発に関する理解がより深まりました。この知見は、現在の認証設計の仕事にも大きく役立っていると感じます。

惜しみない人材育成サポートで、日々成長を実感しながら働ける

仕事をするなかで、松本さんが最もやりがいを感じる瞬間について教えてください。

日々、新しいことに出会い、知識が広がっていくことが一番のやりがいです。当社はジョブローテーションのチャンスも多く、多様な部門、職種を経験できます。私自身、さまざまな領域を横断する形でキャリアを歩んできたわけですが、一社にいながらこれだけ幅広い知見を身につけられるのはエプソンならではだと思います。

現在担当している認証領域に関していえば、ロボットの安全性について外部の認証機関と折衝していくこと自体にやりがいを感じています。企画設計者と認証機関の考え方の違いを理解しながら通訳するように交渉を重ねていくのですが、これまで培った知見やスキルをフル活用して取り組む必要があり、成長実感を味わいながら仕事ができています。

成長実感のあるお仕事とのことですが、貴社には能力開発やキャリア支援といったサポート環境はありますか。

はい、能力開発のためのサポートは手厚いです。例えば、私は「機能安全エンジニア資格」を会社の費用負担で取得しました。業務に直結する知識やスキルを学べたので、現在はロボットの認証全般を見られるようになるため機械安全の資格である「シニア機械安全エンジニア資格」の取得に向けて勉強を続けています。

また、認証過程で海外のエンジニアと折衝するため、今後は通訳なしでコミュニケーションが取れるよう英会話も始めたいと思っています。語学に関しても会社の支援制度があるので取り組みやすいと思います。

この他にも、社内公募制度や海外トレーニー制度、マネジメント研修などさまざまなサポートが受けられます。新しいことにチャレンジしたい方、自 己を成長させたいという意欲にあふれた方にとって、非常に魅力的な職場だと思います。

誰もがロボットを簡単に動かせる、社会に誇れるソフトウエアを開発

MS企画設計部/萩尾 賢昭

萩尾さんは、技術営業や生産技術などさまざまな職種を経て、2017年にエプソンに入社されています。転職のきっかけや入社の決め手についてお聞かせください。

新卒で入社したのは半導体を扱う商社で、LSI(大規模集積回路)の技術営業に従事していました。そのなかで、商談相手だったメーカーの開発担当者が「この製品は、私が作ったんです」と誇らしげに語る姿に感銘を受けたのです。私も自分で手掛けた製品を世に送り出したいと思うようになり、カメラメーカーに転職しました。

そこではカメラの生産設備におけるエレキ・ソフトウエア設計を担当し、モノづくりの面白さを知りました。さらに開発設計など、より上流工程にも携わってみたいと再び転職活動をし、高い技術力のあるエプソンに入社を決めました。

当時30代半ばの転職で、入社前は「自分のスキルが本当に通用するのだろうか」という不安を抱えていました。しかしいざ入社してみると、本当にあたたかく迎え入れてもらえ、すぐになじむことができました。配属先の上司や先輩が手取り丁寧に仕事を教えてくれたのも印象的でしたね。

現在担当されている業務について教えてください。

MS事業部において産業ロボット用ソフトウエアの企画設計と、企画検討推進などのプロジェクトマネージャーの職務を担っています。

ロボットの操作には、動きを覚え込ませるためのソフトウエアが必要なのですが、一般的にはそのソフトウエアを扱うためにプログラミングスキルが必要で、そのようなスキルを持たない人たちにとってはうまく動かせないという実情があります。私たちはその課題に着目し、誰もが簡単にプログラミングできるソフトウエア「Epson RC+ Express Edition(以下、RC+ Express)」を開発しました。プログラミング言語を学ばなくてもロボットを動かせる画期的な商品です。

2021年8月にスカラロボットに対応したRC+ Expressをリリース。2022年3月に行われた国際ロボット展で展示したところ、大きな反響がありました。工場で「ロボットをうまく扱えない」「動きを少し修正したい」など要望が上がったときに、SIerなど外部のエンジニアを呼ぶことなく、その場ですぐ惜しみない人材育成サポートで、日々成長を実感しながら働ける誰もがロボットを簡単に動かせる、社会に誇れるソフトウエアを開発対応でき、作業効率が上がるという声をいただきました。

私は、このソフトウエアを改良するタイミングで参画しました。水平に加えて垂直にも動く6軸ロボットに対応させるべく、ゼロから要件定義を行いました。とても大変なプロジェクトでしたが、2022年8月に無事リリースを迎え、お客様からは「こういうのがほしかった」と喜びの声をいただきました。

RC+ Expressは今後、生産現場におけるロボット普及に大きく貢献すると確信しています。「このソフトウエアは私たちが作りました」と心から誇れることが、技術者として何よりもうれしいですね。

住みやすく働きやすい、自然豊かな長野で人生を満喫する

MS事業部ならではの働く魅力や醍醐味には、どのようなものがありますか。

われわれMS事業部の最大の特長は、高速・高精度に動く品質の高いロボットのハードウエアと、それを細やかに操作・制御できるソフトウエアの両方を兼ねそなえていることです。これらをセットで提供できるからこそ、幅広いソリューションを提供できていると感じます。

またエプソンという会社自体が、ロボットの最大のユーザーであることも、他にはない魅力です。グループ会社のなかには当社のロボットを使ってプリンターを製造している工場があるので、そこで実際の使用感や問題点を確認し、すぐに製品改良に生かせています。

萩尾さんは、エプソン入社を機に長野に移住されたそうですが、長野での生活はいかがですか。

私は福岡出身で、その後東京や大分で生活した後、長野にやってきました。都会も地方もどちらの生活も経験したわけですが、長野はとてもバランスがよく仕事も生活もしやすいと感じています。

今は妻と小中学生の子どもの4人暮らしですが、長野は教育県といわれるだけあって学習環境が整っています。医療面においても大学病院もあればかかりつけ医院も充実していて、不安な点はありません。

気候に関しては、夏は涼しく非常に過ごしやすい半面、冬の寒さがとても厳しいです。ただ積雪は多くありませんし、住宅の暖房設備や断熱性能が非 常に優れているので、家のなかはとても快適です。雪に覆われた山の稜線(りょうせん)は非常に美しく、いつも見とれてしまいますね。

最後に、記事をご覧の方にメッセージをお願いします。

何か一つ、ご自身の強みをもった方と一緒に働きたいと思っています。当社にはさまざまな部門、職種がありますし、希望次第でジョブチェンジもかなうので、必ずやご自身の強みを生かせる場所が見つかるでしょう。専門性を追究することも、領域を広げることも、どちらも実現できるのが当社の魅力です。

もちろん転職は簡単に決断できるものではないですし、大きな不安が伴うものだと思います。エプソンには、その皆様の大きなチャレンジを受け入れる環境と体制が整っていますので、ぜひ安心して飛び込んでいただきたいです。皆様のご応募をお待ちしています。

出典:ビズリーチ 公募ページ「セイコーエプソン株式会社」(2022年12月1日公開)より転載

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