会社全体の目指す姿に向けて、
予算を通じて舵取りを行う。

入社後、希望通りの部署に配属されたそうですね。

はい、財務経理部に配属されました。３年目まではファイナンスチームに所属し、主に為替管理の業務を担当。その役割は、日々為替動向と会社全体の通貨別取引量をチェックしながら、堅確で効率的な為替取引を行うことでした。エプソンは連結で売上１兆円を超える企業であるため、為替の業務でも一回で数十億円という取引が発生する場合もあります。為替レートは日々変わるなか、その時々で適切で効率の良い取引を考えながら実行していかなければならないのはプレッシャーでしたが、半面、やりがいも大きかったです。

そのなかで印象に残っている出来事はありますか？

コロナ禍での対応が印象に残っています。その時の私のミッションは、グローバルで会社の資金繰りが逼迫するなか、グループ間で資金の貸し借りをすることで、うまくグループ全体に資金が行き届くようにすることでした。毎月、毎月、海外のグループ各社に資金状況をヒアリングし、「本当に必要な資金なのか」あるいは「余剰な資金はないか」をしっかり把握し、その上で会社の上層部と話し合い、適切に資金を配分していく。その間、各社と密度の濃いコミュニケーションを重ねたことにより、資金をうまく回すことができ、今は問題なく各社が健全な事業活動を継続できており、達成感を覚えています。

現在の仕事内容を教えてください。

４年目に業績管理チームに異動し、現在は本社のコーポレート部門の費用や業績管理を担当しています。その役割は、会社全体の業績目標達成と最適な財務構造実現に向けて、各部門や採算管理部門の取り組みを計画し、その進捗を現場と一緒になってチェックすること。それは会社全体の目指す姿の実現に向けて舵取りを行っていくことであり、経営層に近い仕事と言えます。

そこで自分の力を発揮できた仕事を教えてください。

次年度の予算を作成するにあたって、人事本部や営業本部、知的財産本部などの本社部門の予算計画値を積み上げていくのですが、予想以上に経費の金額が膨らんでしまったことがあります。そのまま予算化してしまえば、採算構造の悪化につながってしまうし、何よりも各本部にもっとメリハリを意識してほしいという思いを強く持ちました。そこで、まずは各部門が予算を希望する理由、予算を必要とする取り組みテーマの目的をしっかり把握するために、何度も各部門とのヒアリングを実施し、それを経営層に正しく伝えました。その一方で、経営層とは、会社の目指す姿と、そのなかで資源を投入するテーマ、逆に効率化を図るテーマを確認。ある部門に対しては、経営層の考えを納得してもらえるまで何度も説明して、経費の削減を計画していただき、予算の最終化を行うことができました。

経営にダイレクトに影響するやりがいのある仕事ですね。

はい。予算計画の数字を積み上げて報告するだけの仕事ではありません。世の中のトレンドも睨みながら予算化していき、その背景や理由、今後の予算見込みもしっかり考えて、経営層が正しく経営判断できる資料まで携えて報告することが求められますから。そのためいつも頭をフル回転させています。

現時点での課題はなんですか？

これまでは予算策定にあたって、会社全体の採算を俯瞰してみることで問題を認識し、軌道修正のための活動を行うなど、“会社全体”に関わる業務に取り組んできました。しかしその一方で、本当の意味でエプソンの現場を熟知するには至っていないのが課題です。各現場を知ることでより精度の高い財務経理業務が実現できるようになれればと思っています。

今後の目標を教えてください。

せっかくエプソンというグローバルメーカーに勤めているのに、販売最前線や製造最前線の現場を知らずにいるのはもったいないなと思います。そういう意味で、海外の販売会社などに赴任し、その現場で数字を扱う部門で経験を積んでみたいですね。グローバル全体の計画や施策をつくっていく上では、そうした経験が不可欠だと感じています。